研究概要 |
本年度の研究では、木材や木質材料の材質劣化に関与すると思われる微小欠陥部として、これらの主要構成要素である仮道管や木繊維細胞壁のS_2中に存在するスリッププレ-ンを取りあげ、これの形態的特徴ならびに発生状況、発生数と強度的性質との関連性について明らかにすることを目的とした。この目的達成のために、本研究では,異なる荷重レベルで供試材料(スギ、コナラ)を縦圧縮すること(予備圧縮)によって人為的にスリッププレ-ン発生密度を変えた試料を調製し、これの縦引張強度特性および、壁中のスリッププレ-ン発生数、スリッププレ-ンの形態計測を行った。とくに、壁中のスリッププレ-ンの検出および発生数の測定には、本年度補助金によって購入した高解像度テレビ付光学顕微鏡を用いた。本設備は、無染色解繊試料中のスリッププレ-ンを容易に検出することができ、しかもVTRに記録した光顕画像と現有の画像解析装置を用いてスリッププレ-ンの傾斜角度を迅速に測定することができた。本研究の結果:(1)スリッププレ-ンは縦圧縮最大荷重の25%荷重レベルから発生し、最大荷重(100%荷重レベル)附近で急増する、(2)スリッププレ-ンは放射組織と交差するところに集中的に発生する、(3)50%荷重レベルで、靱性は約25%低下し、強度は10%低下するが,100%荷重レベルでは靱性の約8割が失われ、強度も半分以下になるなど、スリッププレ-ンは材質を著しく劣化させる、(4)スリッププレ-ンは繊維軸に対して60〜65°傾斜している、(5)最終破断はスリッププレ-ンのところで発生する、などが明らかとなった。このように、スリッププレ-ンは低い荷重レベルから木材中の特定部位に発生し、しかもこれが材質を著しく脆化させる要因であることが判明した。平成2年度は微生物により生じた微小欠陥部を取りあげ、これによる材質劣化を検討する予定であり、それに必要な基礎的実験を本年度内に実施完了した。
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