研究概要 |
この研究の基本目的は,電気伝導性を木材の物理性と力学性に関連づけて,ひいては電気伝導性を木材材質の評価と管理に連携させるための基礎を確立することであった。すなわち,わが国産材で最重要とされるスギ品種とカラマツとを使った研究は,つぎの事項に関する考察と実験的研究とである。(1)社会が変革しつつあるいま,木材工業に適合する材質評価と材質管理の概念を明確にする。(2)材質評価指標に電気伝導率を位置づける根拠を明らかにする。(3)年輪構造と電気伝導率との相互依存性を明らかにする。(3)バラツキ管理を目指して,木材基本性質の変動係数を明示する。(4)力学性能評価に電気伝導を導入できるように,荷重負担の年輪内推移を明確にする。(5)電気伝導率に関与する木材構造要因を指摘する。事項ごとに得た成果の概要は,つぎの通りである。 1.材質評価と材質管理の概念:『現代の生産管理』の立場から,フィ-ド・バック型の材質管理システムのあり方を考察し,木材工業と林木生産との具体的な連携方法を提唱し,詳細は成果報告書に述べた。 2.材質評価指標としての電気伝導率:電気伝導率が材質評価指標として有用であることを認めた。 3.木材基本性質の変動係数:管理概念で最重要のバラツキ表示に変動係数を取り込み,成果報告書にスギとカラマツのバラツキを一覧表化し,スギ性質のバラツキが品種の混合にあることを実証できた。 4.荷重負担の年輪内推移:年輪内の比重分布(=壁率推移)と荷重推移を画像解析で照合し,早材部では座屈現象による破壊,晩材部ではミクロフィブリル傾角の関与が明らかになった。 5.電気伝導率に関与する木材構造要因:ミクロフィブリル傾角の関与が定量的に明らかになったほか,晩材の電流負担率は壁率からの推定値よりも大きい,などが明らかになった。詳細は,成果報告書に述べた。
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