研究概要 |
ティラピア(無細胞性骨)とサクラマス(細胞性骨)について、骨形態計測法を主な手法として骨代謝の動態を調べ以下の結果を得た。 1.ティラピアをカルシウム(Ca)不足飼料、Ca不足淡水、実験的鱗再生によるCa需要の高揚を組み合わせた条件下で飼育すると、骨と鱗からCaが流出する。Caの動員には骨基質の形成量の減少及び破壊吸収量の増加による骨量の減少う伴う過程と、骨量の減少を伴わずCa密度の減少による過程の二つが区別され、鱗については後者の過程のみが認められる。前者の過程は骨芽細胞の不活性化及び破骨細胞の活性化により、後者の過程は不活性な骨芽細胞の関与による。環境水のCa不足は飼料のCa不足に比べ大きな効果を示す。Ca不足条件下での骨量及びCa密度の減少は条件の改善により促される骨芽細胞の活性化により速やかに回復する。一方、高Ca条件(10mMCaをふくむ淡水+正常飼料)は新生基質の石灰化速度を高めるが骨量自体には影響しない。破骨細胞は多くは単核小型で、哺乳類のそれが多核巨大であるのに比べその活性は低いと考えられる。又、基質の破壊吸収を伴わないCaの溶出は骨細胞を欠く無細胞性骨では骨基質形成休止中の骨芽細胞を中心に行われ、その機能は哺乳類における骨細胞に比べ低いと考えられる。 2.池中養殖サクラマスの1,2才魚における骨の形成、吸収活性の季節変化は、銀毛化、生殖巣の発達する時期に一時的な骨代謝活性の増加と骨形成活性の低下を示す。これは海水適応能の獲得や性成熟という魚体の大きな生理的変化に骨代謝活性が影響されることを示す。海水養殖サクラマスについては現在計測を継続中である。以上の結果から、魚類の無細胞性骨は鱗とともに高等脊椎動物の骨組織同様、摂取し得るCa量及び生理的Ca要求量に応じ、Caを貯蔵又は放出する体内緩衝系として機能することが定量的に明らかにされた。
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