本研究では魚類病原ウイルスの構造蛋白および魚類の免疫グロブリン(Ig)に対するモノクロ-ナル抗体(MAb)を開発すること、さらに、それらMAbを用いたアフィニティ-クロマトグラフィ-で蛋白を特異的に精製することを目的とした。ウイルス構造蛋白に対するMAb開発の研究実績として、1.魚類の重要病原ウイルスでる伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)に対して反応性を有する抗体を産生するハイブリド-マ46株の中からウェスタンブロット法によるスクリ-ニングを経てIHNVのG、N、M1、M2の各構造蛋白に対するMAbを開発し得た。2.これら抗IHNV MAbの特異性は高く、宿主細胞の蛋白はもとより、ラブドウイルス以外の魚類病原ウイルスとの交差反応を全く示さないことを明らかにした。3.特に、抗N蛋白MAbの特異性は高く、魚類ラブドウイルスの種あるいは株をも識別でき、IHNの疫学的調査にきわめて有用なMAbであることを明らかにした。 一方、魚類Igに対するMAbの開発ではニジマスの精製Igを抗原として供試し、約100株の抗体産生ハイブリド-マを得、77株がH鎖に、2株がL鎖に、23株が現在性状不明の血清蛋白に反応することをウェスタンブロント法で確認した。これらMAbの一部を供試し、ニジマスリンパ球に対する蛍光抗体法を試み、何割かのリンパ球が表面Igを保有することを明らかにした。また、これらMAbを用いた免疫アフィニティ-クロマトグラフィ-によって、ニジマス血清からIgをきわめて高純度に精製できることを確認した。
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