研究概要 |
今年度は昨年度の研究で、系統的一自然群と認められた真の広義のサバ型魚類Scombriform fishes,(クロタチカマス科Gempylidae,タチウオ科Trichiuridae,サバ科Scombridae)の進化過程に、側線系、鼻孔及び嗅覚器などの外部形態を手掛かりとして詳細な考察を加えた。 その結果、中層深海域に原スズキ型魚類からムカシクロタチ類Scombrolabraxを経て進化してきたクロタチカマス類が種々の生態的地位を確立してきたと考えられる。それを基盤にさらに生態的地位を海底付近に開拓していって海底依存的生活型を確立したのがタチウオ類であり、海面表層域に遊泳力を増大させると共に進出していったのがサバ型であるとの2つの進化経路を認めることができた。 昨年度の研究で、サバ型魚類の中のマグロ類Thunnusとカジキ類Xiphiiform fishes(マカジキ科Istiophoridae,メカジキ科Xiphiidae)の類似が実際はよく似た生活域と生活型を得るに至ったがための系統的には無縁の、単なる収斂現象であることをつきとめた。今年度はこの説に、より説得力を与えるべくカジキ類が現生のどの魚類群から進化してきたかということを究明しようと試みたが、それを明らかにすることはできなかった。結局、この重要な「マグロ類とカジキ類の類似は系統に由来するのか、それとも単なる収斂現象か」という研究命題は将来の研究課題として残ることになった。
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