海産魚11種(ニシン・マダラ・シマアジ・スズキ・クロダイ・マダイ・ヒラメ・イシガレイ・マコガレイ・ササウシノシタ・アイナメ)、淡水魚2種(ニジマス・ホンモロコ)及び両側回遊魚1種(アユ)、計14種をふ化直後より稚魚期の初期まで飼育し、発育・成長に伴う甲状腺ホルモン(T_4:サイロキシン、T_3:トリヨ-ドサイロニン)の体組織中濃度の変化を放射免疫化学測定法(RIA)により定量した。また、軟骨・硬骨二重染色法により脊椎骨の骨化過程を調べ、その完了時を変態完了点とした。得られた結果は以下のとおりである。 1.甲状腺ホルモンは、仔魚期の初期には極めて低レベルであったが、発育の進行とともにその濃度は上昇した。 2.T_4は、全ての魚類で、また全ての発育ステ-ジを通じてT_3よりはるかに高濃度にあり、その変動もはるかに顕著であった。 3.個体発生初期における甲状腺ホルモン濃度の動態は魚種によってかなり異なるが、多くの魚種で変態期に上昇し、変態完了とともに減少した。この傾向は、異体類で特に顕著であった。 4.仔稚魚期における甲状腺ホルモン濃度の上昇度合は、低位分類群の魚類で小さく、高位分類群の魚種で大きい傾向が認められた。 5.これらの結果より、甲状腺ホルモンは真骨魚類全般にわたって変態に深くかかわることが示唆された。 以上のRIAによる甲状腺ホルモンの動態に加えて、免疫組織化学的手法により脳下垂体の分化や成長ホルモン・プロラクチンの産生状態を明らかにした。今後、これらの成長促進ホルモンと変態促進ホルモンとしての甲状腺ホルモンとの関連性についての研究が重要と考えられる。
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