【目的】個体全体の呼吸量Mと体重Wの間にはM=aW^bの関係がある。生きたマダイの単位体重当り呼吸量M/Wは前期仔魚期には成長に伴って増大し、後期仔魚期には体の大きさに関らずほぼ一定である。(本研究平成元年度の結果)。本年度は普遍的現象とされてきたM/Wの成長に伴う低下が仔魚期に認められない理由について検討した。 【方法】(1)0.00020ー2.9g(孵化直後ー67日齢)のマダイの体全体の細切片の呼吸量Min vitroを検量計で20℃で測定した。(2)0.00022ー0.021g(6ー37日齢)のマダイの体を頭部(胸鰭基部より前で、脳、鰓、心臓、頭腎を含む)、内臓(腹腔内の消化器官系)、ならびに躯幹部(頭部と内臓以外の部分で、全ての鰭と体腎を含む)に分け、これらの部分の相対成長とin vitroの組織呼吸量Q_<02>を測定した。Q_<02>はランク酸素モニタ-で20℃で測定した。 【結果】(1)Min vitroは体重Wに対して生きたマダイと同様に前期仔魚期、後期仔魚期、稚魚期以降に対応する3相性の個体発生的変化を示した。この事実はM/Wの体重依存現象がin vitroでも同様に存在し、この現象が組織Q_<02>の変化だけでなく、体を構成している器官あるいは部分の体重比が発育段階によって変化したりしなかったりすることによっても生じていることを示唆している。(2)0.00022ー0.021gの体重範囲(概ね後期仔魚期に相当)で、頭部、躯幹部、内臓重量の体重に対する相対成長はいずれもisometryで、これらの部分の体重比は体重に関らずほぼ一定と見なされた。またこれらの部分のQ_<02>はいずれも僅かに成長に伴って低下する傾向にあったが、体重に対する相関は認められなかった。部分の相対成長とQ_<02>から計算した個体当り呼吸量M'in vitroと体重Wの間の関係式におけるb値は0.94となり、この値はMin vivoの0.95、Min vitroの0.92と近似していた。従って後期仔魚期にM/Wが体重に関らずほぼ一定なのは相対成長がほぼisometryなためと考えられる。
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