三陸地方の河川に回帰したシロサケOncorhynchus Ketaの再生産形質(卵径、抱卵数)の特性について検討した。さらに、近年、顕著となった魚体の小型化現象が再生産形質に与えた影響についても検討を加えた。 調査河川は、岩手県南部の片岸川、盛川、気仙川の3河川で、1980年から1989年の10年間に蓄積されたデ-タを用いた。解析に用いた標本個体数は1598であった。 現場で体長、体重を計測した後、1個体毎に切開法により全卵を採取し、その重量を10g単位で計測した。その後、少量の卵サンプルを持ち帰り、卵径は体積法により、抱卵数は重量法により推定した。 一般に、体サイズを各再生産形質との間には正の相関があるため、解析には共分散分析法を用い、体サイズの影響を除いて比較を行った。 卵径、抱卵数ともに3河川間で差が認められた。さらに、同一河川において魚体の大きさで補正した修正平均値を用いて、年齢間で比較を行ったところ、卵サイズは高齢魚ほど大きく、また、抱卵数は逆に高齢魚で少ない傾向がみられた。近年魚体の小型化が進むにつれて、同一体重階級に属する魚の平均卵径は大きくなっている。この現象は各体重階級に属する魚の平均年齢が上昇したためであると考えられる。 さらに、1980ー1989年の10年間の4歳魚の鱗から推定した、海洋生活期の成長について検討したところ、1年目の成長の低下が明瞭であるという前年度の結果を支持した。
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