これまでに性染色体が確認された海産魚類はカワハギ科1種、ネズッポ科2種、ウミヘビ科1種で、その後新しい知見は得られていない。これら魚類のグル-プを中心に性染色体分化について研究を進めた。 カワハギ科魚類では、カワハギ以外に雌雄差異は確認されていない。今回ニュ-ジ-ランド産カワハギParika scaberの染色体調査を行った結果、本種の染色体数は2n=40で、すべてA型染色体であったが、雌雄の差異は確認できなかった。なお、第14染色体に顕著な二次狭窄が確認された。本種の核型は、イデオグラムの比較によって本邦産ウマズラハギとよく似るが、二次狭窄の有無によって両種を明確に判別できた。この結果は、日本生物地理学会誌に投稿した。あわせてニュ-ジ-ランド産ブル-モキ(Latridae)についても染色体調査を行った。この結果は、日本生物地理学会年次大会(第45回)において発表の予定である。 また、ネズッポ科魚類については、ネズミゴチを中心に、染色体内部構造の分析に不可欠な組織培養法による染色体標本作製法の導入を検討した。その結果、イ-グルスMEM培地をベ-スに浸透圧、塩類濃度等を調整した培養液を用いて、鰭の初代培養を行って良好な結果を得た。これを用いて、染色体の分染を試み、一部の染色体腕に濃染部が認められた。本技法をさらに改良し、雌雄差について調査を進める計画である。 一方、核型に異型対があるマダイについて詳細な検討を試みた。材料は人工媒精によって得られた50個体の稚魚で、異型対が見られるST染色体について調査した。その結果、異型対は個体によってはみられるものの、全ての個体を同型異型で明瞭に判別できなかった。なお、自然三倍体が1個体確認された。また、新たにA型染色体腕中央に二次狭窄が確認された。これら結果については、平成2年度日本水産学会春季大会において発表の予定である。
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