研究概要 |
降海性サケ科魚類の多くは孵化後一定期間河川生活を送った後、形態的には体型の変化に伴い体色が銀白色を呈し、スモルトになり降海する。この銀毛変態現象は形態学的、また生理学的には多くの変化を伴うことが知られている。銀白化は実際には甲状腺ホルモンの関与のもとに、表皮へのグアニン塩基の蓄積によるものであるが、このグアニンの由来、運搬経路については明らかではない。本研究ではグアニンが肝臓で生成され、血液を介して表皮へ運ばれると考え、スモルト化を物質レベルで定量化することを目的として行った。 サクラマス1年魚を用い、銀毛前、銀毛時及び銀毛後の血清を採取した。2次元SDSーPAGE並びに家兎抗サクラマス銀毛血清を用いたWestern blotting法での結果、銀毛前後の血清のパタ-ンに差異を見いだした。即ち、銀毛前の血清には全く観察されない蛋白が、銀毛時及び銀毛後の血清に見られた。この蛋白は等電点5.0ー5.5,分子量43,000ー50,000で銀毛魚に特異的な蛋白である可能性が示唆された。一方、肝臓におけるプリンヌクレオシドホスホオリラ-ゼ(PNPase)の活性に関しては、雌雄ともに同調的にスモルト化するスチ-ルヘッドマス2才魚を用いて2ー7月にわって15点のサンプリングを行った。PNPaseの活性測定法はイノシンを基質として、キサンチンオキシダ-ゼとのカップルアッセイにより、生ずる尿酸を定量化する方法を選定した。肝のPNPase活性は、2月下旬(パ-)から徐々に上昇し、4月下旬で最高となるが、外見的により銀白化があらわれる5月には、この活性は低下し、脱鱗が目立つ下旬には、再度上昇した後、徐々に定常状態に達した。今回、銀毛変態に伴う特異的な血清蛋白の出現を見いだし、また、肝のPNPaseの活性変化を観察したが、今後これらの蛋白及び酵素の関連、さらに皮膚のグアニン量との関連性を追求して行きたいと考えている。
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