研究概要 |
マイワシの皮部からたんぱく質を抽出し、脂肪酸過酸化活性を指標として、種々のクロマトグラフィ-により精製を行った。その結果、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一バンドを与える活性画分を得た。本画分はプロトヘムIXを含むヘムたんぱくだが、加熱により脂質過酸化活性をほぼ完全に失ったことから、活性はヘム鉄による非酵素的なものではないことが明らかになった。 従来、動物組織から単離されたリポキシゲナ-ゼは非ヘム鉄を含み、遊離脂肪酸のみを基質としているのに対し、本酵素はヘムを含み、遊離脂肪酸だけでなく、トリグリセリドをはじめとするエステル脂質にもよく作用する点で特異な性質を示した。また、反応速度は大豆リポキシゲナ-ゼよりは遅く、ヘモグロビンとの中間的な値を示した。各脂肪酸に対する酸化速度を比較すると、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸よりもリノ-ル酸の方が速く、自動酸化とは大きく異なっていた。しかし、リノ-ル酸の酸化によって生成するヒドロペルオキシドの位置異性体組成は9および13-ヒドロペルオキシの比が約1と自動酸化と一致し、この点では唯一含ヘムリポキシゲナ-ゼとして知られているフザリウム属のカビから単離されたものと一致した。このように本酵素は一般のリポキシゲナ-ゼとかなり性質の異なったものであるが、Z,Z-1,4-ペンタジエン構造への特異性と、ヒドロペルオキシドの酸素結合が立体特異的である点から、リポキシゲナ-ゼの一種と思われる。 また、各種フリ-ラジカル捕捉型の抗酸化剤、キレ-ト剤はいずれも酵素を阻害したが、グリセロリン脂質、特にホスファチジルエタノ-ルアミンは有効な阻害効果を示し、実際の応用が期待された。
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