研究概要 |
新鮮なマイワシ皮から抽出した脂質過酸化活性画分を精製し,ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一な、活性染色で陽性な画分を得た。本画分はSDS電気泳動でも単一のバンドを与えることから,一種類のポリペプチドから構成されており、その分子量は約1万8千と推定され,プロトヘムIXを含有していた。 本標品によるリノ-ル酸酸化生成物の性状を調べたところ,反応温度5℃で反応時間を5分とすると,13ーcis,trーヒドロペルオキシドがほぼ完全に選択的に生成し,前年度にヒドロペルオキシド位置異性体には選択性がないとしたのは,反応時間が長かったために,ヒドロペルオキシ基の異性化が起こったためと思われた。また,ヒドロペルオキシドの光学活性を分析すると,S型のみが生成していた。以上の結果は,マイワシ皮の脂質過酸化活性はリポキシゲナ-ゼであることを示しており,魚皮でのリポキシゲナ-ゼの確実な証明は本研究が最初である。 次に酵素がマイワシの魚臭発生に関与しているかどうかを検討するため,リノ-ル酸との反応においてヒドロペルキシドリア-ゼ活性がマイワシ皮にあるか調べた。その結果,粗抽出物を自動酸化によって調製したリノ-ル酸ヒドロペルオキシド(9および13の混合物)と反応させると,13ーヒドロペルオキシド由来のヘキサナ-ルのみが選択的に生成し,また本活性が加熱により失活することから,13ーヒドロペルオキシドリア-ゼ活性が存在することを確かめた。リア-ゼ活性を指標に精製を進めると,リペキシゲナ-ゼ活性と挙動が完全に一致した。しがって,両活性は同一タンパク質によって発現されることが明らかになった。
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