研究概要 |
マイワシ皮からたんぱく質を抽出し,脂肪酸過酸化活性を指標として種々のクロマトグラフィ-により精製した。その結果,ポリアクリルアミド電気泳動で単一で,活性染色で陽性な画分を得た。本画分はSDS電気泳動でも単一なバンドを与えることから,一種類のポリペプチドから構成されており,分子量は約1万8千と推定され,プロトヘムIXを含んでいた。 本標品のリノ-ル酸過酸化活性は加熱により失活し,またZ,Zー1,4ーペンタジエン構造を有する脂質に限定されたので,本活性はリポキシゲナ-ゼと推定されたが,エステル脂質にも作用し,ヘムたんぱく質であるなど一般のリポキシゲナ-ゼとは異なる性質を示した。 本酵素によるリノ-ル酸酸化生成物を分析すると,13(S)ーヒドロペルオキシドが選択的に生成していた。本反応の位置および立体選択性から,本活性がリポキシゲナ-ゼであることが確証された。各種ポリエン酸に対する活性を比較すると,ノリ-ル酸,リノレン酸などのC18酸に対する活性が高く,EPAやDHAなどの魚油構成長鎖高度不飽和脂肪酸に対する活性は比較的弱かった。 マイワシ独得の魚臭に対する本酵素の寄与を調べるため,マイワシ皮のヒドロペルオキシドリア-ゼ活性を調べたところ,マイワシにはリノ-ル酸ー13ーヒドロペルオキシドを選択的に分解し,ヘキサナ-ルを生成する活性が存在した。本活性を指標に精製を進めると,リポキシゲナ-ゼと一致し,両活性が同一のたんぱく質によって発現されることが明らかになった。したがって,マイワシ皮での魚臭原因物質のアルデヒド生成には,酵素が関与していることが明らかになった。
|