研究概要 |
昨年度は主にアリルホルムアミダ-ゼの特性を明かにしたが,本年度は,トリプトファン代謝経路のうち,キヌレニン経路の第1段の反応を触媒するトリプトファンピロラ-ゼとヒドロキシアントラニル酸オキシゲナ-ゼの活性とそれらの性質について観察すると同時に,セロトニン生成経路の第1段の反応を触媒するトリプトファンヒドロキシラ-ゼの作用も観察した。 1.トリプトファンピロラ-ゼの活性測定法を検討し,今までに用いられているいくつかの方法の最短を明かにした。この酵素は比較的不安定で、10倍程度しか精製できなかったが,ヘマチンにより活性化されずEDTA,メチレンブル-の添加によっても全く影響を受けなかった。 2.ヒドロキシアントラニル酸オキシゲナ-ゼは,キヌレニン経路の第5段の反応を触媒し,ヒドロキシアントラニル酸からアミノカルボキシムコニックセミアルデヒドを生ずる。この生成物は脱炭酸されて分解に進む経路とNAD合成へと進む経路の分岐点に在る。今回の観察においては,この第5段の酵素活性と,分解(脱炭酸)活性とを同時に追跡しその比から,NAD合成経路の比重が極めて低いものと考えられた。 3.前年度の観察で,キヌレニン経路の第2段の酵素であるアリルホルムアミダ-ゼが高濃度のトリプトファンで阻害されることが明かとなった。そこで,もう1つの代謝経路であるセロトニン合成経路について検討し,魚類肝臓がその経路の第一段の酵素であるトリプトファンヒドロキシラ-ゼ活性を示すことを明かにした。特に,ニジマスとソウギョは高い活性を示した。このことは,魚のトリプトファン代謝の重要な経路がセロトニン生成系であることを示唆している。
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