研究概要 |
魚肉は高度不飽和脂肪酸を一般に多く含有するため、これらの加工・貯蔵に際して油焼けをはじめとした脂肪酸化に起因する問題が常に存在している。本研究は、最近注目されている高圧処理が、魚類脂質の酸化に対していかなる影響を及ぼすかについて解明することを目的としている。 研究の第一段階として、新鮮なイワシから抽出した脂質そのものに及ぼす高圧処理の影響を検討した。イワシ脂質に5,000気圧までの加圧を行い、高圧処理中における脂質酸化の程度をPOV、TBAを指標として調べた。その結果、高圧処理中に、脂質の酸化は見られず、さらにPOVが40程度まで酸化させたイワシ脂質に同様の処理を行っても、処理中に酸化が進むことは観察されなかった。これらのことより、まずイワシ脂質は高圧処理中には酸化を受けないことが判明した。しかし、このように高圧処理したイワシ脂質を30℃に貯蔵したところ、高圧処理イワシ脂質の酸化は未処理脂質よりも酸化されやすいことが分かった。高圧処理により、イワシ脂質の構造になんらかの変化が生じたためと推測された。 研究の第二段階としてイワシ肉モデル系を設定した。実際にイワシを加圧加工する場合、イワシ脂質は単独で存在せず、タンパク質など各種成分との共存下で酸化を受けるはずである。そこで、イワシ肉を凍結乾燥した後、脂質抽出を行って得られるイワシ脂質と脱脂イワシ肉を混合した後、脂質抽出を行って得られるイワシ脂質と脱脂シワイ肉を混合してモデル系を調製した。本モデル系に1,000および2,000気圧(1時間)処理を行い、5℃貯蔵中におけるイワシ脂質の酸化の進行程度を調べた。その結果、脂質の酸化は非加圧モデル系よりも加圧モデル系の方が速やかに起こることが判明した。また、その進行速度は圧力が高い方が速いことも分かった。高圧処理により、いわし脂質とタンパク質間の相互作用に何らかの変化が生じるものと考えられる
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