研究概要 |
1.各種水産生物におけるDーアスパラギン酸(DーAsp)および関連化合物の分布 DーAspおよび分子内にDーAspを含むNーメチルーDーアスパラギン酸(NMDA)、さらに新たにアメフラシより単離した新ペプチドβーDーAsp・glyの分布を海綿、腔腸、環形、軟体、節足(甲殻類)、棘皮、原索、脊椎(魚類)の各種動物類、緑藻、褐藻、紅藻の各種海藻類、植物および動物プランクトン類(Chaetoceros salsugineum,Artemia salina)の合計82種について分析した。その結果、DーAspはほぼ全ての無脊椎動物類に検出され、しかも全Aspの20ー60%を占める種が多かった。脊椎動物の魚類にも痕跡程度のDーAspが認められ、その分布が非常に広いことが明らかになった。しかし、海藻類、プランクトンには検出されなかった。海藻類やプランクトンを主餌料としている軟体動物例えばムラサキイガイやアワビのDーAspについては、内因性起源が示唆された。NMDAはHPLCのクロマトグラムで判断する限り、軟体、環形、節足の無脊椎動物に認められるが、二枚貝類を除きその量は少ない。βーDーAsp・glyは更に分布は限られ、軟体動物類でもアメフラシ類(アメフラシ、アマクサアメフラシ)に見出されるにすぎない。 2.DーAspおよび関連化合物の代謝 DーAspの生成機構をムラサキイガイを用いて調べた。LーAspからDーAspの生成を触媒するアスパラギン酸ラセマ-ゼ活性はいずれの組織でも確認ではなかったが、オキザル酢酸とアミノ酸からトランスアミナ-ゼによるDーAspの生成が確認された。アミノ基供与化合物ではLーアラニンの活性が最も強かった。組織別では筋肉より内臓組織で活性が高かった。このDーAspの生成がDーアスパラギン酸トランスアミナ-ゼによるものなのか、Lーアスパラギン酸トランスアミナ-ゼによる副生成反応によるものなのか不明である。
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