本研究では、水産甲穀類アカフジツボに体液に含まれるレクチンを糖結合活性を持つ機能素材として利用するために、化学修飾と酵素修飾技術を使いレクチンの活性部位を決定すること及び糖結合保持する修飾レクチンを作成することを目的にしている。アカフジツボレクチンは、構造を異にする140Kダルトンと64Kダルトンのレクチンからなる。これらは、それぞれの22Kと16々のサブユニットが分子間ジスルフィド結合してダイマ-をつくり、さらに非共有結合して構成されている。そこで最初に、有機溶媒、尿素、グアニジン塩酸塩、pH変化のレクチンの高次構造と活性に対する影響を調べた。その結果、64Kレクチンは変性剤やpH変化に対し安定であることが分かった。一方、140Kレクチンはサブユニットに解離して活性が低下した。 Dーガラクトサミンのアミノ酸基に1ーアジドー5ーナフタレンスルホニルクロライド(ANSーCl)を導入して、糖の発蛍光性光反応性誘導体を合成した。これで64Kレクチンを光アフィニティ-ラベルし、標識部位を同定した。次に、レクチンを化学修飾して修飾率と凝集活性の変化を調べた。140K、64Kレクチンとも、トリプトファン、ヒスチジンアルギニンの修飾により活性を失い、レクチン活性の発現にこれらのアミノ酸測鎖が重要な働きを演じていることを示唆している。チロシンとアミノ基の修飾では凝集活性の低下はみられなかった。 64Kレクチンサブユニットは、128位に1残基のメチオニンを持つ。そこでブロムシアン分解により、そのペプチド結合を選択的に切断し、ゲル瀘過クロマトグラフィ-で2つのジスルフィド結合で囲まれた糖認識結合ドメインを単離した。さらに、これを塩酸処理したセファロ-ス4Bカラムにかけてガラクト-ス結合性を保持したドメインを得た。
|