近年、わが国の農業において農業サ-ビスのもつ重要性が急速に高まってきている。しかもその農業サ-ビスは機械・施設の利用を伴なう農作業の外注、すなわち生産的サ-ビス(production service)と情報の収集・処理・意志決定活動などに関する農業サ-ビス、すなわち経営的サ-ビス(management service)いずれの領域においても重要性を高めてきている。本年度はこれらの農業サ-ビスの需要と供給、これをめぐる市場構造と産業組織、農業サ-ビスの需要と供給を契機とした農業経営の発展と農業経営構造の変化に関する理論的・実証的研究を行った。特に実証的研究によるファクトファインディングを指摘しておくと、以下の通りである。 1.生産的サ-ビスは、従来の小規模経営中心の重要構造から大規模経営も含めた需要構造に変化してきている。 2.他方、経営的サ-ビスは大規模経営中心の需要構造から小規模経営も含めた需要構造へ変化してきている。 3.生産的サ-ビス、経営的サ-ビスの何れに関してもその供給主体は急速に多様化してきている。特に顕著な近年の特徴は、生産的サ-ビスに関しては従来の大規模経営、農協中心の供給構造から生産資材供給会社も含めた供給構造への変化してきており、また経営的サ-ビスに関しては従来農協、普及所中心の供給構造からパソコン・ソフト会社などを含めた供給構造に変化してきている。 4.特に生産サ-ビスに関しては、大規模経営、農協は供給主体としての性格と同時に需要主体としての性格も併せもつケ-スが増加してきている。 5.農業サ-ビスの市場はその重要性の高まり、需要主体・供給主体の多様化とともに競争的性格の強い市場構造になってきている。
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