北海道のような寒冷地では、ダム等の水源流域からの流出について、冬期間の渇水および融雪水など未解決の問題が多い。この積雪融雪による流出現象は利水上極めて優れた雨水の貯留機能とみなされる。また、冬期間および潅漑期間の渇水についてはダム管理の点から農業水利上究めて重要な課題を含んでいる。 1.大夕張ダム、岩尾内ダム、金山ダムおよび幌別ダム流域の降雨量およびダム流入量の水文資料を収集した。 2.小流域(静内地区、南後志地区)を設定し、融雪流出を詳細に検討した。 3.ダム流域の渇水量については、流量の5日移動平均値を用いた。例えば、大夕張ダム流域の25年間の積雪期間最小流量は0.01〜0.6(mm/day)の範囲にあり、平均0.25(mm/day)である。降雨流出対応期間は0.11〜1.20(mm/day)と、0.62(mm/day)であり、積雪期間の渇水が甚だしい。これは、積雪期間の降水は雪として貯留されて、流出を発生させる因子とはならず、長期間にわたり無降水状態が続いたのと同じ現象とみなすことができる。 4.降水量と渇水量の相関性を見るため、年最小5日平均流量をとりあげ、この値が発生する日以前のn日間の降雨量を検討する。幌別ダム流域ではnが10から25にかけて最小流量と降水量との相関が高くなり、n=25で最大値を示した後は相関係数は下降し始める。また、大夕張ダムではn=70で相関係数は0.71と最大になる。 5.寒冷地ダム流域では、流出量に対して降水量が少なく測定される場合が多い。これは流域の高標高の降水量を求めることが困難であること、降雪の捕捉率が低いことなどによる。このことから積雪による融雪流出を検討するには、降水量の割増し係数を考慮する必要がある。この割増し係数は地点(面的・点的)割増し係数および高度割増し係数である。これらの係数はあわせて観測降水量の1.5〜2.0倍とする程の係数となる。
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