積雪寒冷地帯のダム等水源流域からの流出について、融雪期間の流出量は年流出量の40〜60%を占め、またその期間が4〜6月にあるため、利水上極めて優れた雨水の貯留機能とみなされる。また、潅漑期間の渇水については、営農上非常に関心が高く、また、冬期間の渇水については積雪現象により潅漑期間以上に渇水の程度が著しい。このため、大夕張ダム、岩尾内ダム、金山ダム、幌別ダム流域および石狩川流域を対象に高水量、低水量、水収支、融雪流出等の検討を行った。 1)金山ダム建設により空知川上流域の流出特性は、渇水流量の増大、最大流量の減少がみられる等の流況に変化が生じた。2)石狩川流域内の水源流域の流出状況は地域により差があり、十勝岳山麓では、年流量がきわめて小さいのに対し、暑寒別岳山麓は3000mm前後の流出量を示している。3)ダム流域の渇水量については、積雪期間最小流量は織雨流出対応期間の値より小さく、積雪期間の渇水が甚だしい。これは、積雪期間の降水は雪として貯留され、土壌水分の補給とか、流出を発生させる因子とはならず、長期間にわたり無降水状態が続いたのと同じ現象とみなすことができるためである。4)年最小流量とこの値が発生する日以前のn日間の降雨量との関係は、幌別ダム流域でn=25で最大値を示した後は相関係数は下降し始める。また、大夕張ダムでは、n=70で相関係数は0.71と最大になった。5)寒冷地ダム流域では、流出量に対して降水量が少なく測定される場合が多い。これは流域の高標高の降水量を求めることが困難であること、降雪の捕捉率が低いことなどによる。このことから積雪による融雪流出を検討するには、降水量の(高度および面的・点的)割増し係数を考慮する必要がある。これらの値はきわめて大きく、流域全体としてみると観測降水量の1.5〜2.0倍の降水量に相当する程の係数となる。
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