吸着カチオンが土の力学的特性・保水性におよぼす影響について、pF試験、コンシステンシ-試験、締固め試験、圧密試験から検討した。また、これらの試験を行うにあたり土粒子表面へのカチオンの吸着、あるいは溶脱現象に関する問題を整理する必要があり、このような観点での検討をも行った。なお、これらの解析は、土の構造の変化に着目して行った。以下にその結果を要約する。 1.コンシステンシ-との関連では液性限界、塑性限界、収縮限界試験から検討したが、これらの実験結果は、(1)カチオンの影響による土の構造の変化(分散・凝集構造)、(2)外力の大きさとそれに伴って変化する粒径の大きさ(行動単位-単粒構造をも含む)、(3)カチオンの濃度の変化に伴う拡散二重層の厚さの変化、の三つの要因を考慮することによりその挙動が整理されることが明らかになった。 2.保水性(pF値)は、コンシステンシ-限界とよい対応を示したが、添加カチオンが高濃度の場合には、pF値との対応では液性限界は高くならなければならないが実験値は低下した。これは高度に発達した綿毛化構造が外力により破壊され、結果として液性限界が低下するものと考えられた。この事実は沈降体積実験からも明らかに実証された。 3.圧密試験では、吸着カチオンの外部溶液への拡散の問題を制御した実験が重要であり、この問題を考慮した実験を行うことにより、全ての沈下挙動が、外力(荷重)、行動単位の変化、拡散二重層の厚さの変化で説明されることが明らかになった。 4.締固め試験におけるカチオンの影響および締固め土の強度は拡散二重層の厚さに支配されるところが大きいことが明らかとなった。 5.土粒子へのカチオンの吸着、溶脱のメカニズムを室内実験を通し明らかにし、吸着・溶脱量の収支計算からもこれを検証した。
|