フィルダムの設計・施工の最適化に不可欠である施工可能日数の推定方法を確立するため、実際に施工されたフィルダム遮水部の施工デ-タを調査し、その取りまとめを行った。本年度は、すでに施工を完了している施工地域を異にする三つのダム(笹ケ峰、中里、葛丸)について、実際に施工された実績調査を行い、盛立可能日雨量の検討を行った。 1)、笹ケ峰ダム;このダムは新潟県妙高高原町に築造された中心遮水ゾ-ン型のフィルダムで、標高1200mの豪雪地帯に施工されたダムである。このダムの積雪期を除く803日間にわたる施工期間の中で、降雨のあった日に遮水部の盛立を実施した日を取出し、これを降雨量別に分類して相対累積度数図を作成した。この図より、降雨日として計上した日の盛土終了後の降雨、あるいは盛土途中における降雨による施工の中止を考慮して、盛立が行われた日数の90%を占める日雨量(R_<90>)を求めると、その値はR_<90>=7.0mm/dayとなった。 2)、中里ダム;このダムは三重県藤原町に築造されたゾ-ン型のフィルダムで、積雪量はほとんどなく冬期にも築堤が可能で、年間を通じて盛立てが行われた。このダムで実施された盛土作業とその降雨量から、笹ケ峰ダムの場合と同様に相対累積度数図を作成し、盛立の行われた日数の90%雨量を求めると、R_<90>=12mm/dayとなった。 3)、葛丸ダム;このダムは岩手県紫波郡に築造された中心遮水ゾ-ン型のフィルダムで、年間の堤体盛立は4月下旬から10月上旬に限られる施工条件のきびしい現場である。上記=ダムと同じように、遮水ゾ-ンの盛立てが実施された日とそれに対する降雨量とから相対累積度数図を作成してR_<90>を求めると、R^<90>=2.5mm/dayが得られた。 今後引続き各地のダムについて同様の調査を実施すると同時に遮水材の土質、他の気象条件と施工可能降雨量の関係を調べたいと考えている。
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