当研究室では、昭和48年より、コンクリ-トの耐酸性に関する実験を継続して行ってきており、pHが約4程度の水(銅山廃坑からの湧出水混入による)が流下している谷川に、多数のコンクリ-ト供試体を浸漬し、その耐酸性を追求してきている。本実験もその一連として、従来使用してきていない耐硫酸塩セメントとフライアッシュセメントB種からなるコンクリ-ト供試体をそれぞれ30本づつ作製し、5年間にわたって諸性状を追跡するため、半数を室内恒温水槽内へ、残りを現地酸性水が流下している谷川に浸漬した。これを室内及び現地長期実験と呼ぶ。その他、1年間の強度発現を観察するため室内短期実験を実施した。これらの実験で測定した項目としては、(1)重量(減少率)、(2)体積(減少率)、(3)密度、(4)超音波伝播速度、(5)動弾性係数、(6)圧縮強度、である。 5年間の両長期実験は、未だ材令1年目しか測定しておらず十分なデ-タ数が得られていないので、結論を出すのは時期尚早であるが、現在までに得られた結果をまとめると次のようになる。 (1)フライアッシュセメントB種コンクリ-トの耐酸性が現在のところ高い。これは、超音波伝播速度、動弾性係数、密度などの非破壊試験結果から十分立証できる。 (2)非破壊試験の内で超音波法は、供試体の形状とか大きさなどに左右されず、測定に時間がかからず極めて有効な方法である。今後とも侵食を受けたコンクリ-トなどの測定に効力を発揮するものと考えられる。 (3)砂防ダムのような現地構造物の調査に超音波法を適用するには、十分な事前の準備と滑らかなコンクリ-トの表面部分を必要とする。
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