研究概要 |
集中豪雨災害あるいは土地利用に関連した洪水流出現象に対し,最近の研究は刮目すべきものが多いが,本年度は今一度,流域開発前のいわゆる自然流域の地形形態的特徴を水文学的観点から吟味・検討し,流域地形の計量評価を図った上で,流域特性と出水特性との関連について検討することを試みた。また,前年度の解析で指摘された貯留型流出モデルの問題点を解消する手法について検討した。得られた成果は以下のようである。1.丘陵山地小流域である下狩川流域(流域面積1.32km^2)を対象として,1/1万,あるいは1/2.5万地形図上で等高線の幅奥行き比w/l=1の点までを河道とみなした河道網を設定し,河道次数に基づく流域モデルの特性を明らかにした。2.流域モデルのlumpingと表面流モデルの適応性を検討し,Q_p=7km^2/s/km^2程度の大出水に対し,流域を単一ブロックにlumpingした流域モデルによる解析結果も,実用上まず良好な結果が得られた。そこで,3.表面流モデルにおいて,河道流計算を省略し,斜面流計算のみによる流出解析を行い,表面流モデルの集中化の可能性を検討した。その結果、lumpingを進めた流域モデルによる解析では,モデル定数の等価粗度N,あるいは斜面流定数kの値を増大させることにより,観測ハイドログラフの再現性はほぼ維持できることが確かめられた。4.貯留型流出モデルによる洪水流出解析に際し,とくに観測ハイドログラフピ-ク部の再現性の向上を目的に,洪水到達時間の概念を応用した遅延効果を流出解析への入力降雨時系列に導入する手法を提案した。この手法を長短期流出両用モデルを用いて,益田開拓農地造成域の出水例で検討した結果,観測ピ-ク流量およびその発生時刻についての再現性が改善されることが実証された。なお,解析には前年度導入した水位・雨量デ-タ収録装置およびパ-ソナルコンピュ-タ-を利用した。
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