本研究では、愛媛県内に設けられた土地利用の異なる試験流域で観測されたデ-タに基づいて、各試験流域の流況特性を明らかにするとともに、河川における低水流出のメカニズムを検討して、渇水流量について考察した。 本研究の初年度にあたる平成元年度には、土地利用の異なる試験流域で観測された諸水文デ-タを比較・検討した。そして、地下水への涵養速度(上層からの浸透速度)は流域固有の値を有し、地下水流出の増加特性は地下水帯への涵養速度と浸透継続時間とによって説明できることなどを明らかにした。 そこで、最終年度である平成2年度では、まず、各試験流域の流況の実態を検討した。その結果、愛媛県と高知県の県境に位置する四国カルスト放牧草地流域では、降水量が多く降雨頻度も高いために、平水・低水・渇水量は比較的大きいこと。一方、愛媛県南予地方に位置する造成畑地流域・山林地流域・樹園地流域の低水・渇水量は、全国平均値と比べてかなり小さく0.5mm/日以下である。ことなどを明らかにした。そして、初年度に得られた結果に基づいて各流域の低水・渇水量を予測した結果、各流域のこのような実態をよく再現できた。 以上のような研究成果をもとに、流域の水循環システムを考慮した長期間流出解析モデルを開発し、山林地流域と造成畑地流域の低水・渇水特性を比較・検討した。その結果、土地利用の異なる流況を考える場合には、流出特性に代表されるような流域の流量安定化機能のみならず、蒸発散による損失をも十のに考慮する必要があることを明らかにした。
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