研究概要 |
本研究では、愛媛県内に設けられた土地利用の異なる試験流域で観測されたデ-タに基づいて、各試験流域の流況特性を明らかにするとともに、河川における低水流出のメカニズムを検討して、渇水流量について考察した。 まず、観測デ-タに基づいて各試験流域の流況の実態を検討した。その結果、i)愛媛県と高知県の県境に位置する四国カルスト放牧草地流域では、降水量が多く降雨頻度み高いために、平水・低水・渇水量は比較的大きいこと。一方、愛媛県南予地方に位置する造成畑地流域・山林地流域・樹園地流域の低水・渇水量は、全国平均値と比ベてかなり小さく0.5mm/日以下である。ことなどを明らかにした。 次に,降雨による地下水への涵養と表裏の関係にある直接流出特性を検討することによって、各流域の低水流出特性を考察した。その結果、ii)地下水への涵養速度(上層からの侵透速度)は流域固有の値を有し、四国カルストに位置する放牧草地流域でおよそ0.6mm/hr、その他の3流域ではおよそ0.2mm/hrである。また、このような降雨による地下水流出成分の増加特性を考慮して、各流域の低水・渇水量を予測した結果は、各流域の実態をよく再現している。ことなどを明らかにした。 最後にこれら流域の水循環システムを考慮した長期間流出解析モデルを開発し、山林地流域と造成畑地流域の低水・渇水特性を比較・検討した。その結果、iii)このような土地利用の異なる流域の流況を考える場合には、流出特性に代表されるような流域の流量安定化機能のみならず、蒸発散による損失をも十分に考慮する必要がある。ことを明らかにした。なお現研究段階では、地質特性と地下水流出成分の逓減係数や地下水涵養速度との関係は必ずしも明らかとなっておらず、今後の研究課題としたい。
|