畑地灌漑計画における用水量は、我が国のような湿潤地帯における畑地灌漑の実態から見直しの必要な部分が見受けられる。本研究では、試験圃場および畑灌実施地において灌漑施設、営農状況および降水量ならびに使用水量を調査し、計画用水量の検討を行うことを目的とした。この調査で得られた主な成果を以下列記する。 1.試験圃場(東京農大厚木中央農場内の野菜圃場)においての調査では、灌漑効果からみて適切な灌水量が認められ、過剰灌水の試験区が生じた。すなわち、降雨量を考慮した灌漑の必要性を改めて認識した。また点滴灌漑での過剰灌水に対する考慮が必要であることがわかった。 2.畑地灌漑実施地での用水利用調査結果から、使用水量は、季節による栽培作物との関連が大きく、降雨の影響があるものの予想したほどの反応を示さなかった。これは、降雨の予知が確実にできないことと水管理での迅速な対応ができないためと思われる。一方、ハウスにおいて雨量との関連が認められ、ハウス内でも雨天時の蒸発散の減少や土壌を通しての雨水の浸潤が推定される。 3.本研究のまとめ方は、既存の研究成果や、今回の試験圃場での土壌水分測定値や気象資料ならびに畑地灌漑実施地での水利用実態などもふまえて、統計的処理によって有効雨量を算出する。また有効雨量の下限値および上限値の検討結果から有効雨量の見直しの必要性が認められた。さらに点滴灌漑のような部分灌漑での湿潤域と非湿潤域における土壌水分観測結果からも、降雨の有効化の見地から意義が認められた。 4.これらの結果から、畑地灌漑用水量の縮小につながる可能性が生じ、今後の新規用水源確保の困難な地域での畑地灌漑事業の推進となるよう期待される。
|