研究概要 |
トラクタの形態設計では,材料の物理的特性値と外的条件から形状決定を行う現行の設計過程において大きな技術的あい路が立ちはだかっている。平成2年度には,バイオニック・デザイン手法の現場適用性を一層高めるため,目的関数とした最小質量,最小費用,最大強度,最大剛性などの規範が,実用的な既出の設計解とどのような違いを有するのか,トラクタ本来の高度な作業機能を満足するものであるのか否かといった視点から,深い吟味を行った。得られた知見の概要は,以下のようである。 1.複合材料の機械的特性に影響する因子のうちで,構成素材の特性(ヤング率,引張強さ,熱伝達率など),構成素材の形状(マイクロバル-ン,粒子,ウイスカ,短繊維,長繊維など),構成割合(各相の体積含有率),構成の仕方(一様あるいは一方向分布,ランダム分布など)や界面の状態,ボイドなどが強度特性に及ぼす影響について数値実験を行った。アプリケ-ション・ソフトウェアとしてNISAIIを用いた。 2.上記1.項の検討結果に基づいて,形状設計と機能設計から求めた材料特性が,お互いに調和して利用できるための方策を検討した。その結果,構造物からの要求に応じた材料特性をもたせるバイオニック・デザイン手法の特色を具体化する方途が見出せた。 このような研究成果から,バイオニック・デザイン手法が望ましい形態設計の効果的ツ-ルとして使用できることが分かった。また本手法は,エンジニアリング・ワ-クステ-ションのようなコンピュ-タ・ネットワ-クの進展につれて,より効率的に利用できるという優れた側面をもっていることも指摘した。
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