1)輪換放牧している放牧育成中のヘレフォ-ド種32頭および18頭にホルスタイン種育成雌牛を5頭ずつ加え、それぞれ地形の複雑な牧区および比較的平坦な牧区に入れ、24時間の行動観察を日中は肉眼、夜間はサ-チライト、肉眼および暗視装置を用いて行った。群構成頭数が大きく地形の複雑な牧区の群は、小群が全体から別れて行動する行動が見られ、日内の敵対行動も増減を繰り返すが、形成された社会構造は比較的安定していたことが示唆された。 2)その後両群をそれぞれ地形の複雑な牧区、比較的平坦な牧区に輪換放牧し、夏季間の発育成績を記録したほか、各月2回24時間の行動観察を行った。地形の複雑な牧区の群は比較的平坦な牧区の群に較べて発育はやや劣ったが、やや小型ではあるが足腰の強い牛に育成された可能性があった。また、山地傾斜地における放牧地の地形は、採食時間や休息時間、およびこれらの季節変化や日内変化には影響しなかったが、日内各時間帯における採食や休息の場所には大きく影響を及ぼした。地形の複雑な牧区における観察結果から、放牧牛の休息場所の選択要因には、夏季において風速が大きく影響を及ぼし、気温と風速の関係と給水施設の位置との関係が、休息場所を決定するものと考えられた。 3)育成牛群36ー39頭および22ー25頭の2群を簡易電牧により仕切った比較的平坦でほぼ長方形の実験牧区(面積110ー150m^2/頭)にそれぞれ24時間放牧し、群の空間行動および社会行動を比較検討した。その結果。面積が同じでも群構成頭数が大きいと群は相対的に大きく広がる傾向にあることが示された。また、敵対行動数は群構成頭が大きいほど多いが、敵対行動の頻度自体は草量と関連しており。現存草量が比較的豊富な時期は敵対行動数が減少した。
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