研究概要 |
1.『厚生新編』(江戸後期の西洋百科事典の訳本)を詳細に調査研究し、更に、その原書Algemeen HuishoudelijkーNatuur,Zedekundigen KonstーWoordenboek by Chalmot(1778年)を国立国会図書館及び佐賀県立図書館鍋島文庫で調査することができた。国会図書館本に比べて鍋島本は非常に美本として保存されていた。ボイス(1769年版)の事典も調査できた。 2.『厚生新編』の馬の種類は、ヨ-ロッパの品種ばかりでなく、アラビヤ、ダッタン、モンゴル、中国、インドやヒットランド小型馬について説明してあった。しかし、日本馬については記載していなかった。 3.『厚生新編』の馬の部と『西洋馬術叢説』(江戸後期写本)の5.6巻の内容が殆ど同一であることが判明した。『西洋馬術叢説』はわが国での最初の馬体解剖書である『解馬新書』(嘉永5年1852・刊本)の成立に非常に重要な刺激を与えた書物である。従って、ショメ-ル(原書はフランス書)の西洋百科事典の内要が、江戸時代後期にわが国の家畜関係に強い影響を及ぼしていることが判明した。 4.『厚生新編』のロバ、水牛、猟犬、山羊、羊、ラクダの説明も、江戸時代で最も詳しい記事であった。例えばロ-マには水牛肉の店がある。独犬の品種としてビ-グル、セッタ-、ポインタ-など。ラクダには単峰と双峰があり、南アメリカにはラマ、アルパカ(毛用種)などがいるなど江戸時代で最初のラクダ科動物についての学術的記載である。 5.『厚生新編』のメルキ(乳)、ボ-テル(バタ-)、カ-ズ(チ-ズ)と日本古来の酪、酥、乾酪との比較の記事がある。将軍吉宗はバタ-、スペイン酒、ビ-ル、赤ブドウ酒や菓子をオランダ人に所望している。家禽では聖マルチン祭11月11日にガチョウ料理を食べ、その胸骨をみて、その冬の寒さを占う風習やペン用のガチョウの羽を聖ミカエル大天使の日・9月29日頃に採取するのが良いと記してある。
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