本研究課題2年度である本年は、屠場で採取した卵巣より回収した卵胞卵子を体外受精し、体外培養により作出した牛8細胞期胚61個を、プロナ-ゼ処理により透明帯を除去し、割球を二分離後、一方で染色体標本を作製して核型分析を行い、性判別率を調べるとともに、他方を用いて顕微測光装置によりG6PDH活性を測定し、本酵素活性の性差を検討した。プロナ-ゼ処理により、正常に二分離した51個の胚にうち、ビンブラスチン処理により、中期(M期)核板がみられたのは29個(56.9%)であった。このうち核型が判別できた胚は23個で、供試胚の45.1%、M期核板が出現した胚の79.3%と高率を示した。しかしながら、二分離胚の抽出液を用いたG6PDH活性の測定値は不安定で、51個のうち12個(23.5%)においてのみ測定が可能であ、その他は活性が認められなかった。G6PDH活性の測定が可能であった12個の二分離胚のうち、性判別が可能であったものは5個で、このうち雌が2個、雄が3個であった。これら二分離胚のG6PDH活性は、雌:0.21、雄:0.23±0.28であった。したがってG6PDH活性の性差を明確に検討することは困難であった。 今回対象としたG6PDHは、その活性が発生に伴い減少していくことが知られているため、発生の初期において活性の測定を行う必要があった。また体外受精した牛胚の体外培養において、8細胞期が一つの発生の分岐点になっていることから、今後、発生に伴い活性が増加していくことが知られているX染色体連関酵素(αーガラクトシダ-ゼ、ヒポキサンチングアニンホスフォトランスフェラ-ゼなど)を顕微測光装置を用いて測定し、その性差を性判別に利用する必要性がある。
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