屠場で採取した牛卵巣より卵胞内卵子を採取し、体外受精により胚盤胞期胚を作出し、顕微測光装置を用いた卵子および胚のグルコ-ス6リン酸脱水素酵素(G6PDH)活性微量測定法の確立を試み、卵子および胚の発生に伴う活性の変動を明らかにした。 実験1において、NADPHの検量線は0ー0.5mMの間で直線性を示したが、卵子の代謝産物の量がきわめて少なく、顕微測光装置を用いても測定は不可能であった。実績2では、抽出用混液により卵子および胚の抽出は可能で、この卵子および胚抽出液を用いてG6PDH活性の微量測定が可能であることが示された。しかしNaOH処理によっても蛍光度の増幅はみられなかった。実験3では、卵子および胚の発生に伴うG6PDH活性の変動は、組織化学的測定による結果と類似した傾向を示すことを明らかにした。 体外受精により作出した牛8細胞期胚を、プロナ-ゼ処理により透明帯を除去し、割球を分離後、一方で染色体標本を作製して核型分析を行い、性判別率を調べるとともに、他方を用いてG6PDH活性を測定し、G6PDH活性の性差を検討した。分離割球のG6PDH活性値は、個体毎の変動が大きく、性差を検討するにはいたらなかった。 以上の結果より、顕微測光装置を用いたG6PDH活性の微量測定は可能であることが明らかになった。しかし卵子または胚のG6PDH活性を、非破壊的に測定することは困難であることが判明した。今後、発生に伴い活性が増加していくと考えられるX染色体連関酵素(αーガラクトシダ-ゼ、ヒポキサンチングアニンホスフォトランスフェラ-ゼなど)を顕微測光装置を用いて測定し、その性差を性判別に利用する必要性がある。
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