最終年度(平成2年度)は牛・鶏試料の熟成による呈味向上に寄与するペプチド類を検索する目的で、牛鶏試料を用いて熟成により生成するペプチド類の挙動を以下の方法で追究した。牛肉・鶏肉の各熟成試料から筋漿低分子画分とス-プ画分(筋肉ホモジェネ-トを20分間煮沸した後の上清液)を得、各画分中のペプチド量、SDSーPAGE像さらにサイズ排除用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ-を行った。その結果、牛・鶏試料ともに熟成に伴い筋漿低分子画分およびス-プ画分中のペプチド量は増加し、特に牛肉のス-プ画分において顕著に増加した。同時に各ス-プ画分の呈味テストを行い、0日よりさらに熟成した試料においてより強い肉様呈味を感じた。SDSーPAGE像の変化からも熟成に伴い分子量1万以下の成分の増加を認めた。特に牛肉試料の筋漿画分では熟成0日に比べて熟成2日目以降、分子量約8千と約5千のバンドが濃くなる傾向が認められた。高速液体クロマトグラムの結果、牛肉の筋漿低分子画分試料において、熟成初期の最初に溶出するピ-ク1、2、3は熟成8日目にはほとんど消失した。これらのピ-クが直接呈味性と関与しているかは不明であるが、牛肉の呈味の完成は熟成の初期に終了するとの示唆もあり大変興味深い結果である。いずれにしても、今回の検討により呈味性に直接関与するペプチド類の検索は出来なかったが、食肉の熟成中に生成するペプチド類について多くの知見を得ることができた。今後、もっと迅速にペプチド画分を分取し、高速液体クロマトグラフィ-にアプライする前の処理(Sephadexカラムなど)を行い、熟成に伴うペプチド類の挙動をさらに明確に掴みたい。今回、呈味性に関するペプチド類の検索という初めてのアプロ-チで、反省点も多くあった。今後とも食肉の熟成による呈味向上に寄与するペプチド類の検索を行いたい。
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