研究概要 |
報告者らは野外において、血清IgG量の極めて少ない白色レグホ-ン種系ニワトリを発見し、その後選抜・交配を繰り返した結果、IgG産生不全の形質をほぼ分離・固定することに成功した。このニワトリの自然環境への適応性は正常にIgGを有する固体とほぼ同等であり、IgG産生不全ニワトリではIgGを主体とした液性免疫に依らない他の生体防衛機構が主役を演じていると考えられる。そこで、本研究ではIgG産生不全ニワトリの免疫機構を解明するための基礎的知見を得る目的で、IgG産生不全ニワトリの全身組織内における免疫担当細胞の分布を免疫組織学的に検討するとともに、胸線依存性抗原投与に対するIgG産生不全ニワトリの免疫応答能を血清学的および形態学的に調べ、以下の結果を得た。 IgG産生不全ニワトリにおける免疫担当細胞の分布を免疫組織学的に検討した結果、脾臓や腸管粘膜組織を始めとする全身のリンパ組織において、IgAおよびIgM産生細胞が正常に血清IgGを有するニワトリとほぼ同様に観察されたが、IgG産生細胞に関しては様々な程度での数的減少が観察され、その減少程度は血清IgG量にほぼ相関していた。また脾臓では莢動脈周囲リンパ組織のリンパ球の数的減少が観察されたが、動脈周囲および静脈周囲リンパ組織は多くの場合正常例に比べて発達するものが多くみとめられた。しかしながら、少数例では莢動脈周囲,動脈周囲および静脈周囲リンパ組織においてリンパ球の高度の脱落がみとめられた。胸線依存性抗原投与実験については研究代表者の所属機関の変更に伴っての鷄群の移動により、経時的な抗原投与実験に耐えうるだけの実験鷄の量産が遅れたため、現在実験例を揃えつつ進行中であり、近日中にこれらの成果をまとめて公表する予定である。
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