研究概要 |
ブドウ球菌の動物の皮膚における保菌状況については、ヒトのそれに比べると十分な調査がなされていない。本研究は計8種類の健康な家畜、家禽、実験動物及びヒトの皮膚に生息するブドウ球菌の菌種の分布状況を調査したものである。 1.菌分離率は、豚100%(29/29)、馬30%(3/10)、牛60%(25/42)、山羊40%(2/5)、鶉90%(46/51)、鶏86%(30/35)、マウス59%(13/22)、ラット81%(17/21)、ヒト53%(18/34)であった。 2.分離頻度の高かった菌種は、豚ではS.xylosus、S.saprophyticus、牛ではS.xylosus、S.sciuri、S.lentus、S.cohnii、鶉ではS.cohnii、S.xylosus、鶏ではS.hyicus、S.aureus、S.xylosus、マウスではS.xylosus、ラットではS.xylosus、ヒトではS.hominis、S.epidermidisであった。 3.ノボビオシン抵抗性のブドウ球菌、特にS.xylosusが動物の皮膚に広く分布していることが示唆された。 4.ヒトから分離されたブドウ球菌はすべてノボビオシン感受性の菌種であり、このことから動物とヒトの皮膚に生息するブドウ球菌の菌種構成には違いのあることが示唆された。 5.著者はすでに豚(Jpn.J.Vet.Sci.,49:703ー709、1987)及び牛(Jpn.J.Vet.Sci.,投稿中)の扁桃からのブドウ球菌の分離について報告した。豚扁桃で最も分離頻度の高かった菌種はノボビオシン感受性のS.hyicus、S.aureus、S.hominis、S.simulansで、牛扁桃ではノボビオシン感受性のS.simulans、S.aureus、S.chromogenes、S.epidermidisで、ノボビオシン耐性菌種はまれであったことを述べた。本研究で、豚と牛の皮膚ではノボビオシン抵抗性の菌種が優勢的にみられ、これらの所見は豚と牛の体内環境と体表環境に生息する菌種構成には違いのあることを示唆しているが、この点については今後さらに検討される必要がある。
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