研究概要 |
ブドウ球菌は現在28菌種に分類されている。大多数の菌種はヒトおよび動物の皮膚を生息場所としている。この皮膚定着性を決めている細菌側および宿主側の因子については,まだほとんど解明されていない。 そこで本研究では、ブドウ球菌の皮膚定着性を決めている細菌側および宿主側の因子を解明するための第一歩として、マウス表皮細胞への付着性について検討した。 用いたブドウ球菌14菌種14株の中で、マウス表皮細胞によく付着した菌種はS.sciuri(細胞1個当りの平均付着数:1.15個)で、ついでS.warneri(0.55個)、S.epidermidis(0.27個)であった。その他の菌種(S.saprophyticus、S.cohnii、S.haemolyticus、S.capitis、S.xylosus、S.simulans、S.hominis、S.hyicus、S.chromogenes、S.aureus、S.intermedius)では0.02〜0.18個であった。 S.sciuriは主としてげつ歯類より高頻度に分離される菌種であり、該菌がマウス表皮細胞に対して高い付着性を示したことは極めて興味深い知見であった。 すでに著者は、前述した14菌種14株について、Vero細胞、家兎の鼻腔、気管、膀胱粘膜上皮細胞への付着性についても検討している。その結果、Vero細胞および上部気道・膀胱粘膜細胞によく付着した菌種はプロテインA保有のS.aureus Cowan IとS.hyicus NCTC10350であることを示し、これらの細胞への付着因子のひとつとしてプロテインAを示唆した。本研究で、S.aureus Cowan IとS.hyicus NCTC10350はマウス表皮細胞に対する付着性はよくなかった。このことより、ブドウ球菌の表皮細胞への付着にはプロテインAはあまり関与していないことが推察された。今後、S.sciuriとマウス表皮細胞の系を用いて、付着因子の解析を検討する予定である。
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