本研究は、各種動物の皮膚に生息するブドウ球菌の菌種分布状況と、皮膚定着性に関与する菌側因子について検討したものである。 1.ヒトおよび動物の皮膚に生息するブドウ球菌の菌種分布 (1) 菌分離率は豚100%、馬30%、牛60%、山羊40%、鶉90%、鶏86%、マウス59%、ラット81%、ヒト53%であった。(2) 分離頻度の高かった菌種は、豚ではS.xylosus、S.saprophyticus、牛ではS.xylosus、S.sciuri、S.lentus、S.cohnii、鶉ではS.cohnii、S.xylosus、鶏ではS.hyicus、S.aureus、S.xylosus、マウスではS.xylosus、ラットではS.xylosus、ヒトではS.hominis、S.epidermidisであった。(3) 動物の皮膚にはノボビオシン抵抗性菌種、特にS.xylosusが広く分布していることが明らかにされた。(4) ヒトから分離された菌種は全てノボビオシ感受性のものであり、このことからヒトと動物の皮膚に生息するブドウ球菌の菌種構成には違いのあることが示酸された。(5)豚と牛において、扁桃に生息している菌種の多くはノボビオシン感受性で、本研究で示した皮膚ではノボビオシン抵抗性菌種が優勢的に見られこのように、豚と牛では扁桃などの体内環境に生息する菌種と皮膚などの体表環境に生息する菌種との間に違いがあることがわかった。 2.ブドウ球菌のマウス表皮細胞への付着 ブドウ球菌14菌種14株のマウス表皮細胞への付着性について検討した。マウス表皮細胞によく付着した菌種は、マウスなどのげつ歯類の皮膚から高頻度に検出されるS.sciuriであり、付着性に宿主特異性がある可能性が考えられた。著者らはすでに報告しているように、Vero細胞や上部気道・膀胱粘膜上皮細胞への付着にはプロテインAが関与していることを示唆しているが、本研究ではプロテインA保有のS.aureusとS.hyicuはマウス表皮細胞にあまり付着しなかった。これらのことより、ブドウ球菌の表皮細胞への付着にはプロテインA以外の因子の存在が想定された。
|