鶏マレック病腫瘍細胞株MSB1-41Cを移植した鶏血清中に存在する腫瘍細胞増殖活性のある105Kgpについて、(1)105Kgpのin vitro産生誘導実験、(2)105Kgpを用いた鶏細胞の無血清培養の検討および(3)担がん鶏血清由来の105Kgpと正常鶏血清由来105Kgpの違いを調べ、次のような成果が得られた。 1.105Kgpのin vitro産生誘導実験:(1)移植したMSB-1ー41C細胞は、生体内において105Kgp陽性であったが、in vitroでは陰性であった。(2)MSB1-41Cの培養条件のうち、温度、添加血清濃度、培養時間等の項目について詳細に検討を実施したが、in vitroにおける105Kgpの産生誘導は失敗に終わった。(3)リポポリサッカライド(LPS)や腫瘍プロモ-タ-であるTPAを用いたMSB1-41Cにより105Kgp産生誘導もまた成功しなかった。 2.105Kgpを用いた鶏細胞の無血清培養の試み:105Kgp高感受生のHU3R27株を用いて、105Kgpによる無血清培養を実施した。(1)105Kgp添加血清無添加合成培地で、HU3R27の増殖を促進した。(2)血清無添加合成培地に105Kgpの他に、卵黄リポプロテイン(LDL)やインスリン(I)の105Kgpに対する増殖促進補助効果を調べたところ105Kgp+LDL+Iや105Kgp+LDLには増殖活性が認められたが、105Kgp+Iでは逆に増殖が抑制され、Iは105Kgpのもつ増殖促進活性を抑制する可能性が示唆された。(3)105Kgpのみを加えた血清無添加合成培地では、HU3R27を継代培養することができなかったが、LDLやIを添加することによってそれが可能となった。 3.担がん鶏血清由来の105Kgpと正常鶏血清由来105Kgpの違い:(1)両105KgpはいずれもHU3R27の増殖を促進した(2)担がん鶏血清由来105Kgpは低濃度(<10μg/ml)でも細胞増殖効果を示したが、正常鶏血清由来105Kgpは高濃度(>50μg/ml)で初めて効果を表し、両105Kgp間に差のあることが明らかとなった。
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