研究概要 |
本年度はネコパルボウイルス株、等にイヌパルボウイルスとネコ汎日血球減少症ウイルスの野外株のin vitroにおける病原性の違い、ならびに抗原性の変化をモニタ-して次の結果を重た。 1)いわゆる“old"タイプといわれるイヌパルボウイルスはイヌ由来細胞系(MDCK)に対する病原性が非常に弱かった。またネコ由来細胞系(CRFK)に対する病原性も低く、全体的にもin vitroにおける増殖性は低かった。しかし、初代イヌ腎細胞(DK)における増殖性は有意に高かった。 2)1980年頃から出現したいわゆる“new"typeのイヌパルボウイルスはモノクロ-ナル抗体で識別できる抗原性の変化に加え、1990年末までに分離した総てのウイルス株の病存性がMDCKばかりでなくCRFKに対してもネコ汎日血球減少症ウイルスと同程度に増強されていた。しかし、DKに対しては逆に減弱していた。 3)ネコ汎日血球減少症ウイルス分離株のなかには、すでに前年度報告書で述べたような、これまでのネコ由来株とは異なった,イヌパルボウイルスに類似した株が再び検出されたことから、イヌとネコ間での種を越えたパルボウイルスの伝播が高頻度で起きている可能性が強く疑われた。 4)詳細な抗原解析の結果を待つ必要はあるものの、これらのイヌパルボウイルス分離株は“old"タイプ株に対する通常の抗血清でおさえられることから、これまでのワクチンはいぜん有効と考えられた。しかし、ネコパルボウイルスのinterspecies transmissionは予期せぬウイルスの変化をもたらす危険性があり、今後ともモニタ-を継続する必要があろう。
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