この研究は、家畜の免疫不全症診断への電子スピン共鳴法(ESR)の適用を目的としたものである。免疫担当細胞では、可溶性活性因子の放出時、食作用発現時等において代謝が活発であると考えられている。このような場合において、NAKPHオキシダ-ゼの作用により酸素が還元され、ス-パ-オキシドが生成される。ス-パ-オキシドは反応性が高く、活性酸素と呼ばれ、異物の不活性化因子と考えられている。この考えに立脚すれば、正常な免疫機能を示す家畜と免疫不全症を示す家畜との間でス-パ-オキシド産生能に差があるはずである。具体的には好中球を例に取り研究を始めた。 まず、ス-パ-オキシドは非常に短い寿命を有するため、通常のESRにスピン捕捉法を組み合せた方法により検出を試みた。ヒト好中球を約93%の純度で得ることが出来たので、これを予備的実験用として用いた。ホルボ-ルミリステ-トアセテ-トを刺激剤として添加したところ、ス-パ-オキシドによるESRシグナルが観察された。このス-パ-オキシドに加え、もう一つの活性酸素であるヒドロキシルラジカルのESRシグナルも観察されたが、好中球によるこの活性酸素の直接生成ではなく、ス-パ-オキシドからトランスフォ-ムしたものであることが判明した。ヒト好中球におけるス-パ-オキシド産生は、高張塩溶液下でも検出され、その産生には必ずしもレセプタ-の介在を必要としないことも合わせ判明した。この結果は、凍結血液の融解時における赤血球溶血の原因を探る上で貴重な情報をもたらした。 つぎに、牛好中球の分離を試みた。当初ヒト好中球と同じ方法で試みたが、全く分離できず、分離法に改良を加える必要があることが判った。現在、フィコルの最適密度、赤血球溶血時期等種々条件を変えて分離を行い、80%の純度で得ることが出来た。さらに純度をあげている。
|