犬糸状虫ES抗原特異モノクロナル抗体の作製:細胞総合技法によってマウスハイブリド-マ細胞を作製し犬糸状虫ES抗原特異モノクロナル抗体を得た。本抗体のES抗原検出率は、犬糸状虫寄生・Mf陽性犬80%、単性(雌または雄成虫のみ)寄生犬25%、オカルト感染(両性成虫寄生・Mf陰性)犬80%、未感染犬0%と、高い検出率が示された。またELISA抗原価(吸光度値)と虫体寄生数の間には正の相関(係数0.75)が示され、抗原価虫体数をおおむね反映していることが明らかとなった。 犬糸状虫感染に対する免疫防御効果:本モノクロナル抗体に対応する抗原をアフィニティクロマトグラフィにて精製分離し犬糸状虫未感染犬に免疫処置を行った上で犬糸状虫を実験感染し、感染184日に剖検して寄生率を比較した。その結果、無処置感染対照犬(寄生率20%)に比べて免疫処置犬ではむしろ高値(同56%)であり、免疫処置が虫体に有利に作用した。著者は別の実験で免疫処置が寄生虫に有利に働くという同様の成績を得ており大変興味深い現象が再び得られた。 虫体抗原分析:犬糸状虫雌成虫、雄成虫、Mf間の虫体構成蛋白成分と抗原性の相異をSDS-PAGEとImmunoblottingにて分析した。その結果、蛋白分画は分子量10-250Kdの間に雌虫、雄虫、Mfからそれぞれ48、46、55分画みられ、抗原性を有する分画がそれぞれ15、20、11分画みられた。さらにES抗原について分析した。ES抗原は無菌的に培養した犬糸状虫雌雄成虫の培養上清より回収した。その結果、蛋白分画は雌虫で21分画、雄虫で16分画であり抗原分画もそれぞれ7、10分画を数えた。これら雌虫、雄虫、Mfのあいだにおおくの共通分子量分画と特異分子量分画を指摘でき、今後精製分離して詳細に検討すべき必要性が示唆された。
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