目的:動物のマイコプラズマ(以下M)感染症の診断や、細菌叢の一つとしてのMの検出は、通常分離・同定による方法が最も確実な手段であるが、Mは発育が遅いため、これらの実施には少くとも数日を要するのが難点である。そこで、イムノバインド法(IB法)を用いてM抗原の迅速検出を行うための基礎実験を行った。方法:Mの寄生率が極めて高いハトの口腔ぬぐい液を検体とした。ぬぐい液の原液または10〜100倍希釈液の0.1ないし0.4mlを、あらかじめDurapore膜をセットしたドットプレ-トで吸引濾過後、膜を乾燥・固定し、1%オキシド-ル加TBSで処理し、常法によりブロッキングを行った。この膜を家兎抗血清及びペロキシダ-ゼ標識抗家兎IgG山羊血清と反応させ、発色液で鮮明なドットが出現した場合を抗原陽性と判定した。同時に、常法によりぬぐい液からMの分離を行い、発育集落をコロニ-ブロット法で同定して、IB法の結果との一致率やIB法によるMの検出限界を検討した。成績及び考察:合計60羽のハトの口腔ぬぐい液のすべてから、2.5ないし5.9logCFU/mlのMが分離された。コロニ-ブロット法による同定の結果、いずれの検体にもM.colum6inumとM.colum60raleの両種が存在することが証明された。IB反応は、前者の抗血清では陽性57例、疑陽性1例、陰性2例で、検出率は95%であった。また、後者の抗血清を用いたIB反応は、陽性56例、疑陽性3例、陰性1例で、検出率は93.3%であった。LogCFU/mlが3以上の検体については、両血清とも検出率は100%を示し、IB法によるMの検出限界は4×10^2/ml以上と考えられる。本法はMの簡便かつ迅速な検出法として実用性をもつものと考察した。
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