鹿児島県内の農家から収集した鶏用飼料112検体について糸状菌の汚染状況を調べたところ、Aspergillus属(71%)、Penicillium属(46%)およびMucor属(46%)の分離頻度が高く、Fusarium属は7%と低頻度であった。Aspergillus属の中では、A.flavus属が62%と高率に分離され、分離した100株についてアフラトキシン(AF)産生量を測定したところ、16株でAFB_1の産生能が確認され、最高23ppmであった。これらのAF産生菌株が分離された検体について汚染濃度を調べたが、いずれも検出限界以下であった。 飼料に混在する糸辞意鵜菌がA.flavusのAF産生に及ぼす影響を検討した。A.flavus株単独培養例とRhizopus株との混合培養例のAFB_1量を調べると、後者のAFB_1が著しく少なかった。また、A.flavus株を培養後高圧滅菌してさらにRhizopus株を接種・培養した場合と、その逆の場合を設けたところ、いずれもA.flavus株単独培養例のAF産生量より著しく少なかった。このことから、Rhizopus株がAFを分解すると同時に、A.flavus株のAF産生を抑制する因子を産生している可能性が示唆された。 診療あるいは家畜衛生事業に従事している獣医師に対しての聞き取り調査によっても急性型中毒の発生例はなかったが、低濃度暴露の危険性は残ると思われ、当研究室で実施しているブロイラ-の疾病調査の一項目に加えて監視を続けることとした。その際の慢性毒性の指標として免疫系への影響を調べることとし、本年度は鶏の貪食系細胞の活性測定法を検討した。鶏の腹腔滲出細胞と脾細胞の殺菌能と活性酸素生成量を調べたところ、日齢による特定の傾向は認められず、孵化前に貪食細胞の比特異的防御能が成熟値に達していることを示すものと考えられた。これらの方法により、AF産生菌による汚染飼料の鶏の免疫系への影響を検討する予定である。
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