タフト細胞(以下、最近の用語として刷子細胞とする)はヒトを含む哺乳動物の内胚葉由来の上皮に散在する特殊な細胞種である。昨年度の本研究において、ラット胃の刷子細胞が、肝型脂肪酸結合蛋白(LーFABP)への抗体による免疫組織化学により特異的に染色されることが見出され、この免疫染色性をマ-カ-として胃における刷子細胞の分布と形態が明らかになった. 本年度はさらに、胃以外のラット組織での刷子細胞の分布と形態、またラットの個体発生における刷子細胞の発達について明らかにするため、走査電子顕微鏡による観察および抗LーFABP抗体による免疫組織化学を用いて研究した.まず、ラットで刷子細胞が高頻度に存在するのは胃および総胆管であることが明らかになった.個体発生において、胃粘膜上皮では生後0日ですでに少数の刷子細胞がみとめられ.強いLーFABP免疫反応性を示すこと.乳離れの時期の生後第3週から4週にかけてその数が急激に増加することがわかった(雑誌論文(1)(2)). 総胆管の上皮においては、形態学的にみとめられる刷子細胞は生後第4週でようやく出現した.刷子細胞の頻度はオスでは第8週から12週にかけて、一方メスでは約2週遅れて第10週から14週にかけて増加して、最終的にオス・メスとも全胆管上皮細胞の約30%を占めるに至った.LーFABPの免疫反応性は初期の刷子細胞にはみとめられず、刷子細胞の数の増加が平衡に達した第16週頃から免疫陽性率が上昇しはじめ、第48週の時点で全刷子細胞の約半数を占めるようになった。 これらの結果は、胆管の刷子細胞はラットの個体発生の非常に遅い時期に出現すること、その発達に性差があること、また刷子細胞の機能と関連すると思われるLーFABPはさらに遅れて出現し、動物の老化とともに増加すること、等を示唆した(雑誌論文作製中).
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