血管再生にあたり、血管基底膜の消失、内皮細胞の遊走、血管内腔の形成の三段階が順次行われるとされる。しかし、内皮細胞の遊走をはじめ、血管再生の微小環境については必ずしも明らかでない。私達は現在までに主として脳血管の新生機序を(ラットを用い)経時的に形態学的に追求し、母血管から出芽した血管索の形態、血管網形成のための血管吻合の機序、血管腔の形成機序について成果を得、Anat Rec 224巻 355-364頁に発表した。 次いで、血管再生の機序を外傷後の組織を用いて検討したが、再生血管の同定、微小環境の分析には不適当であった。私達は最近Fajardoら(Lab.Invest.1988)が用いているKaneboのPVA(ポリビニ-ルアルコ-ル)を本研究に利用し、脳・腹膜・皮下に植え込み、新たな所見を得た。 1.血管再生機序は、組織により異なる可能性がある。例えば皮下での血管再生に伴ない線維芽細胞が、腹膜では中皮様細胞が、脳ではマクロファ-ジュ系の細胞の動員が著しい。遊走中の内皮細胞の同定には第8因子関連抗原の存在、ポリゾ-ムの分布、細胞間に於ける。tight junctionの発達等が参考となる。また、再生血管はほぼ一週間で筋層をもつ。 2.血管再生の場となるPVAは、アルコ-ル(室温で30分)、熱処理(60℃30分)によってもその態度は変わらないが、通液性(通気性)が阻害されると-例えば多量の血球が貯留すると-著しく悪化する。血管再生の場には体液成分の“流れ"が必要である。 3.皮下の植え込み実験に於いて一度PVA内で増殖させ、それを凍結、アルコ-ル処理した標本を皮下に植え込む実験を行なうと共に、あらかじめ可溶性コラ-ゲン、エラスチン、FGF等を浸み込ませたPVAの血管再生促進効果を検討しつつある。
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