研究概要 |
分泌蛋白の合成,細胞内移動については従来多くの研究がなされ,ほぼ解明されたと考えられる。しかし分泌果粒膜蛋白の合成,細胞内輸送,他の細胞内膜系との関係は明らかではない。以下のことを明らかにすることを目的とし研究を行った。1)分泌顆粒膜に対するモノクロナ-ル抗体を作製し、すべての分泌顆粒膜に共通する抗原が存在することを証明する。2)分泌顆粒膜に共通する抗原の細胞内局在を免疫電顕で明らかにする。3)同抗原の細胞内の輸送経路、およびリサイクリングの過程を検索する。 ウサギおよびラット耳下腺分泌顆粒膜を抗原としてモノクロナ-ル抗体を作製し、それぞれ分子量55ー60Kd,98ー63KdのN結合型糖鎖をもつ糖蛋白と反応するモノクロナ-ル抗体を得た。免疫組織化学による検索によりウサギおよびラットにおいて、それぞれすべての外分泌腺細胞、内分泌腺細胞の分泌顆粒が染色され、分泌顆粒膜の共通抗原が存在すことが証明された。免疫電顕法、TritonSー114による分画等の方法を用いて分泌顆粒膜共通抗原は膜結合蛋白であり分泌顆粒膜の内腔側に局在することが証明された。同抗原はゴルジ空胞、ライソゾ-ムにも存在した。ARー42Jラット膵臓外分泌腺腫瘍細胞を用いたペルオキシダ-ゼ標識抗体の取り込みの実験においては、ペルオキシダ-ゼ標識抗体は直ちに被覆小胞内に取り込まれ、15分以内にエンドゾ-ム内に入った。更に標識抗体はトランスゴルジネットワ-クおよびライソゾ-ム内に移動した。6ー9時間後、一部の分泌顆粒内に標識抗体が認められた。以上の結果により分泌顆粒膜共通抗原が分泌後、再利用されていることが明らかになった。標識抗体はゴルジ層板内にはとりこまれないことと免疫電顕の結果は分泌顆粒膜共通抗原のプ-ルはゴルジトランス側の小胞やトランスゴルジネットワ-クに存在することが強く示唆された。
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