コレラトキシンサブユニットB結合ワサビペルオキシダ-ゼ(BHRP)を鶏の下肢帯筋に注入し、脊随運動ニュ-ロンプ-ル(MNP)を逆行性に標識した。この方法によりMNPは細胞体だけではなく、樹状突起、軸索、第一次求心性線維まで標識された。特に樹状突起は末端の極めて細い部分まで標識され、側索に入り込んだ樹状突起の先端は軟膜の直下に到達しているのが確認された。下肢帯の各筋のMNPを標識した結果、これまでの方法では不可能ではあったMNP全体の樹状突起構築全体を観察できた。後脛骨筋の樹状突起は外側核背外側部にある細胞体の集団からほぼ全方向に向い、側索には軟膜直下まで、背側には後角基部まで、更に内側には内側核領域まで樹状突起が分布していた。腸腓骨筋、尾側腸骨屈筋の樹状突起は外側核の外側端から外側核背側および腹側縁に沿い二方向に分布しており、特徴的な樹状突起構築を示した。それらの樹状突起の大部分は自質内で分岐していた。以上の様な結果から今回明らかになったことは、各々のMNPに特徴的な樹状突起構築が存在し、それは各々のMNPへの入力要素の違いを反映しているのであろうという点である。今後はそれぞれのMNPに特徴的な樹状突起構築がいかなる過程を経て形成されるかの点について研究を行いたい。
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