新しい血管作動物質の中枢神経系における産生・分泌・受容機構に関する組織化学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570030
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 山田 久夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (00142373)
• キーワード: 内因性ジギタリス様物質(EDLS) / ANP / BNP / エンドセリン / 血管作動物質 / ナトリウム利尿 / 視床下部 / ニュ-ロホルモン

研究概要

血管の収縮、水・電解質バランスの調節機構に関与するANP・BNPファミリ-、エンドセリン、内因性ジギタリス様物質(EDLS)を対象に脳内での産生・分泌・受容機構について組織化学的研究を行った。
ANP・BNPに関する研究の結果、ラット、ブタともに脊髄後角付近にBNP陽性の神経終末が認められたほか、ブタでは室旁核などに陽性ニュ-ロンが存在したが、ラットの脳内には認められなかった。ラットの脳内のANPニュ-ロンのうちcortexに存在するものなどその後の研究で否定されているものもあり、ANP・BNPファミリ-にrANP、rBNP以外の類似のシ-クエンスを持つ物質の存在が推定された。
エンドセリンに関しては、準備実験で中枢神経系における陽性ニュ-ロンを確認していたが、アミノ酸配列や塩基配列についてホモロジ-検索を行ったところ他の内因活性物質とのホモロジ-が多く、活性部位についてのプロ-ブや抗体は問題があると判明した。種々の傍証からニュ-ロンがエンドセリンを持つことはほぼ確実であるにもかかわらず、RIAで10^2pg/g程度の含量であり常識的には免疫組織化学の感度を10^2倍も下まわる。Na,KーATPaseをはじめとする他の内因性活性物質とのホモロジ-の高い抗体やプロ-ブを用いての組織化学的研究は筑波大のグル-プが論文発表しているが、証拠能力は低い。われわれは、ペプチドをコ-ドしない部分のプロ-ブをデザインし、目下検索中である。
EDLSに関してはイヌにおいても検索し、ラットやサルと同じく視床下部大細胞性領域で産生されるニュ-ロホルモンであることが判明した。電顕的検索からEDLSの陽性反応は特定の細胞内小器官とは一致せずニュ-ロン内にdiffuseに存在した、EDLSの化学構造は未だ不明であるが、最近の報告では糖とアミノ酸1ケの結合体、またはステロイドとされており、それらを裏付ける所見であった。

研究成果

• [文献書誌] Ihara N.: "Immunohistochemical studies on the distribution of endogenous digitalisーlike substance(EDLS)ーcontaining neurons in the rat hypothalamus,with special consideration on the possibility of their coexistence with posterior lobe hormones." Arch Histol.Cytol.51. 35-42 (1988)
• [文献書誌] Yamada H.: "Immunohistochemical localization of atrial natriuretic polypeptide(ANP)in human atrial and ventricular myocardiocytes." Histochemistry. 89. 411-413 (1988)
• [文献書誌] 山田久夫: "食塩による昇圧と内因性ジギタリス様物質(EDLS)含有ニュ-ロン." 自律神経. 25. 375-379 (1988)
• [文献書誌] Kawata M.: "Morphological aspect of atrial natriuretic peptideーimmunoreactive cells in the rat brain and heart." Peptides. (1989)
• [文献書誌] Yamada H.: "Histochemical demonstration of endogeninous digitalisーlike substance(EDLS)ーneuron system in dog and macaque hypothalamus,using digoxinーantibody." Brain Res.(1990)
• [文献書誌] Yamada H.: "Histochemical demonstration of the ouabainーlike immunoreactivities in the mammalian hypothalamic neurons." Neurosci.Lett. (1990)
• [文献書誌] Mukoyama M.: "Preparation and characterization of a monoclonal antibody to alphaーhuman atrial natriuretic polypeptide.In:Advances in atiral peptide research(Eds:Brenner B.M.and Laragh J.H.)vol.2 pp191ー195" Raven Press New York, (1988)
• [文献書誌] Takahashi H.: "Hypothalamic endogenous digitalisーlike substance and blood Pressure regulation.In:Central nervous system and blood pressure control(Eds:Ijichi H.and Takahashi H.)" Life Science Publishing,Tokyo, 312 (1988)