研究概要 |
血管の収縮、水・電解質代謝の調節に関与するANPファミリ-(ANPs)、エンドセリン(ET)、内因性ジギタリス様物質(EDLS)を対象に脳内での産生・分泌・受容機構について組織化学的研究を行った。 ANPsに関する研究の結果、ラットやブタではANP・BNPともに脊髄後角に陽性神経終末が観察された。ブタのみ視床下部にもBNP含有ニュ-ロンがみとめられるが、その後の生化学的報告から、哺乳類全体としてみるかぎりBNPはむしろ心室性のペプチドで、別に脳ぺプチドとしてCNPの存在が判明してきた。 ETの神経組織における分布は筑波大のグル-プにより論文報告されているが、用いた抗体やプロ-ブはNa,KーATPaseなどの他の生理活性物質とのホモロジ-の高い部位をエピト-プしたものである。また、ETはRIAで10^2pg/g程度の組織内含量で、常識的な免疫組織化学の感度の限界を100倍も下まわる量であるため、彼らの報告の証拠能力はきわめて低い。ETは、遺伝子レベルの解析からヘビ毒と共通の祖先をもつもので、われわれの報告した哺乳類だ液腺の発生学的デ-タや培養神経細胞に対する作用などから考えて、第2の神経成長因子(NGF)として扱ったほうが良いと思われる。 EDLSの化学構造決定の論文が最近発表され、EDLSは植物由来のシス-トランス-シス型ステロイドとくにウアバインにたいへん似た構造を持つものとされた。その発表が、EDLSと免疫交差活性を有する抗ウアバイン抗体を用いたわれわれの論文投稿の直後であったため、論文の書き直しを余儀なくされたが、視床下部で産生される神経ホルモンであることが確証された。 上記のように最近の生化学的・生理学的所見に弾力的に対応し研究を進めたため、当初計画より少々の遅れはあるが、大きな成果が得られたため、次々論文報告するとともに新たな研究に発展させたい。
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