1、シュワン細胞のマ-カ-として、二種類のS100蛋白にたいする抗体を使用した所、S100のβ鎖にたいするモノクロナ-ル抗体(日本抗体研究所)とS100蛋白に対するポリクロナ-ル抗体(DAKO)では、細胞の染色性に差がみられ、再生過程のシュワン細胞は、正常のものと異なる蛋白組成のS100蛋白を持っている可能性が示された。 2、切断された神経束のシュワン細胞は、単独で移動出来る(7日で約2mm程度)が、より遠く(10mm以上)まで移動するためには、再生軸索の存在が必要であることがわかった。 3、分裂の起こる場所については、ほぼ、切断部近傍であることは判明したが、障害を受けたシュワン細胞のみが分裂するのか、より広範囲に分裂出来るのかについては、明確な結果が得られなかった。これは、主に、BrdUに対する、免疫染色が、teasing材料では、必ずしも安定しないためであり、この点を克服し、さらに検討する予定である。 4、正常のシュワン細胞は、数100ミクロンの範囲にわたり軸索を巻いているが、再生時に現われるシュワン細胞も、既にほぼこれと同程度の長さを持っていることが明らかとなった。 以上より、シュワン細胞は、障害を受けると、その近くで分裂し移動するが、新しく分裂したシュワン細胞は、正常時に存在するシュワン細胞とは異なるタイプのS100蛋白を持つ可能性があり、また、再生軸索が存在するとより遠くまで移動できるものと考えられる。
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